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知っているようで知らない、お客様の声。「伝えること」の重要性を明らかにしたbandeのインタビュー調査
西川コミュニケーションズのマスキングロールステッカー「bande」。1枚ずつめくれるというユニークな形状とカラフルで豊富なデザインで人気のこの商品を対象に、グループ会社であるフェムマーケティングハウスでインタビュー調査を行いました。
数多くのイベントに出展し、お客様とのコミュニケーションをとる機会も多かったbandeですが、聞けているようで聞けていなかった、お客様の声とは。その声を受け止め、bandeではどのような改善施策をとったのか。
ブランド初となるインタビュー調査の結果について、bandeアートディレクターの高橋佳代子とデザイナーの河合恵に話を聞きました。
実際の調査の様子とともに、bandeの取り組みについてご紹介します。
インタビュー調査を実施した背景と目的
―――なぜインタビュー調査を実施することになったのでしょうか? 調査の背景について教えてください。
高橋: bandeという商品が一般的にどういう印象か、第三者的な意見が知りたいというのがスタートにありました。ずっとbandeに関わっている私たちは考えが凝り固まっている自覚があったので、客観的な意見を聞いてみたくて。
河合: お客様の声を聞く機会は、実はけっこうあるんですよ。bandeは文具好きが集まる「文具女子博」などのイベントにもよく出展していて、お客様に直接bandeを販売しています。私たちもスタッフとして参加しているので、ブースにお立ち寄りいただいた方とコミュニケーションをとっています。
ただ、やっぱりそういった場所では本当にリアルな声は聞けていないだろうなという思いもあったんです。
bandeの商品詳細については公式サイトをご覧ください。
https://bande.ne.jp/
―――これまでマーケティング調査はされていないんでしょうか?
高橋: 私たちがbandeのマーケティング担当になる前の、ブランド立ち上げ当初には実施したようです。ただ、だいぶ時間が経っていますから、当時の結果をそのまま参考にはできません。
河合: bandeの強みって何だろうということは、私たちが担当するようになってからも、ECサイトやSNSの戦略を見直すタイミングで考えてはいました。
そこでは1枚ずつめくれる形状やカラフルな柄が強みだろうということで落ち着いたんですが、あくまで自分たちが思う長所ですから、客観的に見て本当にそうなのかという疑問は残ってしまって。
bandeのブランディングについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください
マスキングテープを「ひらめきのもと」に デザイナーが挑むブランディング
高橋: そこで今回、マーケティング調査にトライしてみようとなったんです。
それともうひとつ、西川コミュニケーションズのグループ会社に定性調査※を得意とするフェムマーケティングハウス(以下、フェム)があるというのも大きかったです。せっかくグループ会社になったのだから、シナジーを生み出すような仕事をしていこうという話は以前からあって、それが今回実現した形ですね。
※定性調査:インタビューや観察を通し、生活者の気持ちや意識、行動といった、数値化できない定性的な要素を把握するための調査のこと。
フェムマーケティングハウスについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください
ターゲットの見極めが成功のポイント よりよい定性調査のための基礎知識
―――では、今回の調査で、bandeという商品が一般的にどういう印象を持たれているのかを探ったということですね。
高橋: そうですね。ちょうどイベントで使うPOPが見直しのタイミングだったので、POPの調査をメインにしつつ、商品に関することを全体的に聞いています。
私たちも調査ははじめてのことだったので、フェムさんからいろいろとサポートいただいて調査の設計ができました。
最終的に決まった調査の概要は以下のとおりです。(調査は24年7月に実施)
■調査方法
・購入者へのオンライングループインタビュー
・非購入者への会場1on1インタビュー
■調査目的
・現在使用しているPOPが、消費者に理解されているのか
・現在のPOPには必要な情報が網羅されているのか
■調査対象
・20~40代の女性(30~40代優先)
・マスキングテープ/シール売り場に立ち寄り、実際に購入することがある方
(購入者)bandeを自分で購入し、使用している方
(非購入者)bandeをこれまでに買ったことがない方
モニターの息遣いを感じたインタビュー調査
―――では、調査についてお聞かせください。
高橋: オンラインのグループインタビューも、会場での1on1インタビューも、モデレーター(インタビューの司会者)がモニター(被験者)にインタビューする様子をリアルタイムで見ていました。
会場1on1インタビューはbandeの調査であることは伏せてスタートしましたが、途中でbandeの実物やPOPを出して見ていただきました。
実際にイベントで使用している什器にbandeとPOPをセット
やっぱり実際に手に取っていただくと伝わることが多いですね。非購入者の方が対象だったので、bandeの1枚ずつめくれるという形状もご存知ない方がほとんどだったのですが、手に取っていただくとそれまでの印象ががらりと変わることもあって。その様子をリアルタイムで見られたのは、とても興味深かったです。
インタビューの後半にモニターに見ていただきました
河合: オンラインでも会場でも、モニターの方々からは本当にたくさんの意見が聞けましたよね。モデレーターの手腕もあるとは思いますが、もともとモニターの方々がちゃんと自分の意見を言葉にできる方だなという印象でした。
フェムさんではモニターの応募者には必ず電話などで聞き取りをしていて、ターゲットに合った質のいいモニターを採用していることが強みになっているとお聞きしていたんですが、それを実感しました。
―――モニターの方々の反応についてはいかがでしたか? 想定との差はあったのでしょうか。
高橋: フェムさんからはけっこういろいろなことを言われますよと聞いていたので、覚悟してたんですよ。手厳しく突っ込まれるんじゃないかって。でもそれほど厳しい意見は出なかった印象ですね。自分たちが基準を低めにしていたからかもしれないですが(笑)。
河合: ドキドキしてましたもんね(笑)。実際は厳しい意見というよりも、今まで自分たちが考えたこともなかったような意外なことをおっしゃる方が多かった印象です。
高橋: 本当に思ってもみなかった話が出てきましたよね。買うときに商品のどこを見ているのかとか、自分たちの引き出しにはまったくなかったことを知ることができました。
購入者へのインタビューでは「花びら柄の商品は、花を咲かせる気分で貼っています」なんてことを言ってくださる方もいて、そんな素敵な考えで使ってくださっているのか!という嬉しい驚きがあったりして。
組み合わせて花を作れる花びら柄の商品は、bande誕生以来の人気シリーズ
―――ネガティブな意見は出なかったのでしょうか?
高橋: 耳に痛いご意見もありましたよ。特に非購入者の方には、1枚ずつめくれていろいろな柄が出てくるというbandeの形状が伝わっていないという感じがやっぱりありましたね。
ただ、商品を見かけたことはあるけど買ったことはないという方が、実際に商品を手にして1枚ずつめくって紙に貼るという体験をしていただくことで「これなら買ってもいいかも」に変わっていったこともあって。触って初めて利点を知っていただけることもあるんだなと。
河合: 伝わっていなかった部分がちゃんと伝わると、使ってみたい・買ってみようと思っていただけるんだというのを実感できましたよね。その実感がその後の施策に大きく影響しました。
実際にお手に取っていただき、bandeを貼る体験をしていただきました。(左)モデレーター (右)モニター
調査結果を踏まえた「伝えるため」の改善施策
―――調査を終えて、結果を活かした施策などはされていますか?
高橋: 調査結果から見えてきたのは、とにかく形状の特長やいろいろな使い方ができるということが伝わりきっていないということです。これらを伝えることを中心に、当初の予定どおりPOPの改善に取り組みつつ、イベントでの接客やSNSでの表現にも工夫をしています。
二種のPOPでアンケートを実施
高橋: 形状をわかりやすく説明するPOPと使い方を紹介したPOPの二種類を作成し「文具女子博2024」(24年12月 横浜)の自社ブースで来場者の皆様にアンケートをとりました。
POP① 形状をわかりやすく説明
POP② 使い方を紹介
河合: 結果は僅差でしたが使い方を説明したPOPのほうに票が集まりました。意外でしたね。このイベントではbandeを初めて知ったという方も多かったはずなので、より基本的な形状の説明POPのほうに票が入るかと思っていたんですけど。
実際どう使うかまで考えたうえで、買うか買わないかジャッジしているということのようです。見た目のインパクトよりも現実的なところを見ているんだなということにギャップを感じました。
高橋: ただ、「シールやマスキングテープが好きな人だったら使い方のほうが興味があるけど、そうでない人なら形状を説明したPOPのほうがわかりやすいのでは」というご意見もいただきました。確かにそうですよね。場に合わせて使いわけていくべきなんでしょう。
「文具女子博2024」の様子。5万人以上の文具好きが訪れました
イベントブースでは、よりbandeの形状がわかる展示に
河合: イベントではブースの見せ方の見直しもしています。例えば商品をパッケージから出して1枚ずつめくれる形状がわかるような形で置くようになりました。
スペースに限りがあるので、使い方のご提案をする作例を優先してきたんですが、やはり形状を知っていただくにはステッカーが積み重なっている状態を見ていただくほうがわかりやすいでしょうから。
高橋: もちろん作例の重要性も変わりませんけどね。手帳の作例に興味を持っていただいた方には「予定のない日の欄に貼るだけでかわいくなりますよ」とお話ししながら展示していたサンプルを使って実演してみせたところ、「なるほど、こうやって使えばいいんですね」と納得して買っていただけたことなんかもありました。
河合: 具体的な例をご説明するといい反応が返ってくることが多いですよね。
今回の調査を経て、イベントでせっかくスタッフとして立つのなら積極的に使い方を伝えていこうと思うようになりました。どんな商品かがきちんと伝われば興味を持っていただけると実感したことが、イベントでの粘り強さにつながった気がします。
反応を確かめながらのSNS運用
河合: SNSも調査結果を踏まえて少しずつ工夫しています。例えば、商品紹介を投稿する際にも、1枚ずつめくれるということがわかる画像やワードを意図的に入れるようになりました。
(左)2024年6月(右)2024年8月。調査以降、新作投稿の際は「1枚ずつめくれる」という表現を入れています
(左)2024年6月(右)2024年12月。形状がわかるよう、同じ商品でも見せ方を変えています
ただこの状態だと実際に売り場でパッケージを見てもどの商品かわからないというお声もあるので、どちらのほうが反応いいかを試しながらやっています。
売り場やパッケージの画像も試しながら
高橋: 特にXではイベント期間中にブースで取り扱っている商品を紹介していて、Xのポストをもとに商品を探しに来られる方が多いんですもんね。自分が買いに行くときもやっぱり同じようにしますし。
河合: 本当は告知に使ったものと同じ画像のPOPをブースに用意できるといいんですけど、それは今後の改善点ですね。
bandeの形状やデザインをおもしろいと思っていただければ、SNSで拡散が望めます。より多くの方に情報をお届けするために、SNSの運用にも力を入れています。
使って、贈って。bandeから生まれるコミュニケーション
―――形状と使い方の情報発信が必要ということですね。
高橋: 実は以前は使い方の説明POPも使っていたんですよ。それがいつの間にか柄の説明ばかりになっていたことに気づきました。
自分たちはあれこれ作例を考えてすっかり使い慣れてしまったので、もっと使い方の提案を必要とされている方がいることに気づけなくなってしまっていたんですね。
河合: そうなんですよね。実はシールやマスキングテープが好きな方でも使い方がわからないという方はけっこう多いんですけど。柄やデザインが気に入って買っているけど、実際にはそれほど使わないという。
―――そういった方が多いのはうなずけます。持っているだけでうれしくなるようなかわいいデザインですから。
高橋: あと、好きで集めているものだから、使い切ってなくなってしまうのはいやだという心理もあります。今回の調査でも使い切らずに少し残すようにしているという方がいらっしゃいましたし。
自分もそうなんですけどね。かわいいなと思って買って、開封しないまま保管してあるものもけっこう......(笑)。
河合: わかるんですよね、その気持ち(笑)。でも売る側としては使っていただきたいものでして。
―――コレクションされるよりも、使っていただくほうがいいですか?
高橋: コレクションしてくださる方も大事なお客様なんですが、bandeはひとつのロールに80~150枚ほどのステッカーが入っていてなかなかなくなりませんので(笑)、がんがん使っていただきたいです。
何かに貼って、誰かに贈るような使い方をしていただけると嬉しいですね。やはり西川コミュニケーションズは社名のとおりコミュニケーションを支援してきた会社ですから、「伝える」ことが原点なんです。
河合: bandeはめくる楽しみというものが基本のコンセプトになっていますし、やっぱりめくって使っていただきたいですよね。
売り上げの面からいっても、新柄を出していくことも重要ですが、使っていただいてもう一回買っていただくほうがいいのかなと。そうなるとやはり、使い方のヒントになるような情報を発信していくことが重要になってきますね。
ステッカーの枠を超えて、bandeはさらなる展開へ
―――お話しいただいたもののほかにも、予定されている改善施策などはあるのでしょうか?
高橋: リーフレットのブラッシュアップも予定しています。現状は必要最低限の情報しか載せていないので、もっとbandeの魅力が伝わるような内容にしていきたいですね。
河合: パッケージに挟み込まれている台紙もいずれは変更したいです。今のデザインはステッカーの柄を大きく載せていて、華やかでかわいくはあるんですけど、こちらも情報としては足りないのかなと思うので。
高橋: それからこれは今回の調査とは別の部分で動いている話なのですが、bandeを貼るための媒体もラインナップに入る予定です。まずはポストカードが発売になります。
さらには文具を離れて雑貨の展開も予定しています。bandeのコンセプトとつながった、ステッカーとのシリーズになった雑貨を作らせてもらおうと思って、25年3月からポーチとハンカチのテスト販売がスタートします。
(左)春らしく華やかな菜の花ハンカチ。(右)清楚なアイリスポーチ
―――bandeはますます広がっていきますね。
高橋: 私たちはお客様と直接コミュニケーションをとる機会も多くて、実際の声も聞けているほうだと思っていたんです。けれど実際には、知ってるようで知らなかったことがたくさんあった。それに気づかされました。
今回の調査で初心に返ることができました。この結果を踏まえて、今後もbandeのさらなる展開を目指していきます。
bandeに関するお問い合わせはこちら(法人向け)
お問い合わせ高橋 佳代子
西川コミュニケーションズ株式会社 bande アートディレクター 入社後、流通広告のデザイナー、アートディレクターを経て2016~2017年にbandeの立ち上げに参加。2021年から再度bandeプロジェクトメンバーとなり、bandeのアートディレクションを担当。
河合 恵
西川コミュニケーションズ株式会社 bande デザイナー 入社後、店頭販促物のデザインや動画制作を担当。2021年からリスキリングを通じbandeプロジェクトに参加、現在はbandeの商品企画やイベント準備、SNSを担当。