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AIが切り開くリテールの未来【第1回】西川コミュニケーションズ×リテールのこれまでとこれから
このたび、西川コミュニケーションズは「リテールAIアワード2021」を受賞しました。現在取り組んでいるリテールAIの新たな技術について評価をいただいた形ですが、そこへ至るまでには当社でAI普及前からリテールサポートに取り組んできた長年の実績があり、データを活用してきた積み重ねがあることを抜かしては受賞の経緯を語れません。
今回は西川コミュニケーションズでリテール分野のAI活用を進めている大澤洋一郎に、当社のリテールサポートの歴史から未来へ向けた取り組みまでを聞きました。
「リテールAIアワード2021」受賞について
―――まず、西川コミュニケーションズのリテールAIの取り組みに対して賞をいただいたとのことですが、どのような賞なのでしょう。
大澤: はい、このたびリテールAI研究会から「リテールAIアワード2021」をいただきました。
リテールAI研究会は、流通業に関わる企業のDXの推進を目的に設立された一般社団法人です。流通関連商材のメーカーや卸、小売業といった企業250社以上が参加して、さまざまな活動をしているのですが、その中でもAI の導入・DX 推進において積極的な取り組みをしていると評価された会員企業に贈られるのが「リテールAIアワード」です。
今回、当社が会員企業様と協働で進めている取り組みに対して高い評価をいただき、受賞となりました。
―――小売流通に関わる企業が主となる団体に、西川コミュニケーションズも加入しているのですね。
大澤: はい。西川コミュニケーションズはリテール(小売流通)の領域で数十年にわたってさまざまな情報伝達のお手伝いをしてきました。当社の成長というのはリテールクライアントのビジネスとともにあったといっても過言ではありませんし、この先もそれは変わりません。
では、この先のリテールはどうなっていくのかを考えたとき、やはりAIやDXの推進は欠かせません。そこでリテールAI研究会に正会員として加入し、リテールの未来を切り開く新たな技術について取り組みを続けてきました。
カン・コツ・経験を積み上げてきたリテールサポートヒストリー
―――数十年にわたる情報伝達のお手伝いとは、どのようなものだったのでしょう?
大澤: まずスタートは、当社のルーツでもある印刷という情報伝達手段です。例えば訴求力が強く内容が正確なチラシ制作や、店頭での購買を促すPOP、または売り場や展示什器も含めた店頭装飾物などです。
これらのツールでは、例えばこの時期にはこんな商品を載せたこんなチラシがいいだとか、この店ではこういうPOPが効果的といった、カン・コツ・経験が重要になってきます。そういった経験をクライアントと一緒に積み上げ、リテールサポートの在り方を教えていただきながら、お役に立ってきた歩みがあります。
―――それだけ聞くと、データの利活用にはあまりなじみがない業界という印象を受けるのですが。
大澤: いえ、実はかなり早い段階からデータを利活用している業界ともいえます。代表的なものでいえばご存知の方も多いPOSデータです。商品が販売されたときにレジで取得できる情報をデータ化したもので、ポイントカードなどを利用して顧客情報と紐づけられたものは特にID-POSと呼ばれます。
単純な仕入れ売り上げの関係だけでなく、誰が、何を、いつ、いくらで、どれくらい、どのように売れたかといったことまで詳細にわかるデータです。これを分析していくことで、商品が売れる理由/売れない理由というのもわかるようになります。
―――カン・コツ・経験が重視される一方で、データも早くから活用されてきたということですね。
大澤: データ分析と、それをもとにした施策を組み合わせて何をしていくかが大切であり、結局、データを生かすも殺すもカン・コツ・経験が重要になってくるんです。
小売業は他業界と比べて、何らかの施策投下による売上反映がクイックレスポンスで表れます。それがもっともわかりやすいのがPOSデータであり、小売流通業に欠かせない象徴的データとして早くから活用されてきました。
当社でもこの重要なPOSデータの分析には以前から徹底的に取り組んでいます。
POSデータから派生したレポートソリューション「ストアカルテ」
―――POSデータ分析の取り組みとはどのようなものでしょう。
大澤: 例えば私自身が取り組んできたものでいうと、POSデータから派生した「ストアカルテ」があります。
売り上げはもちろん、シェアによる地域支持率や年代別構成比といったさまざまな切り口のデータを集計した店舗単位のレポートであり、店舗の個性や特性といったものが数値で見られるようになっています。
―――それによって何ができるのでしょう。
大澤: 例えば同じチェーンの店であっても、購入客の60%以上を60代以上で占める店舗もあれば、50%以上が30代以下という店舗もあります。ストアカルテではそういった店舗ごとの個性を数値という根拠で捉えることが可能であり、多店舗展開しているチェーン店であっても、店舗単位で品揃えを変えるなどの細かい対応をしていくために活用していただいています。
―――確かに多種多様なデータがあればさらに詳細な分析ができますね。
大澤: はい。多様な切り口のデータを集計しているため活用範囲も広く、10年以上継続してさまざまな結果を残してきました。
しかし、ストアカルテに限らずですが、データが多種多様になることで問題も生まれてきます。テクノロジーの進歩によって取得できるデータも増大しているのですが、大量のデータを取得して分析するとなると、従来の方法ではコストがかかりすぎるということです。
―――データ収集のジレンマですね。では今後のデータ分析の展開はどうなるのでしょう。
大澤: ここでカギになってくるのがAIの活用です。データを取得するにも、そのデータを分析して購買行動を明らかにするにも、AIは非常に重要になってきています。
AIの活用で広がるリテールの未来
―――すでにリテールでのAIの活用事例はありますか?
大澤: 大きく二つに分かれます。まずAIテクノロジーの進化として顕著なものはeコマースです。購買行動が行われた時点で、それがすべてデータとして蓄積されるeコマースは、とてもAIに向いています。分析されたデータはUI、UXで活用され、お客様にさらに楽しいお買い物を提供してきました。
今ではすっかりおなじみになった商品レコメンドやチャットボットなど、リテールに関するAIテクノロジーの導入はeコマースから始まりました。リテールのAI活用はまずeコマースで開花したといえます。
―――eコマースがAIとの親和性が高いのはわかりやすいですが、実店舗ではどうでしょう?
大澤: それがもうひとつの流れですね。テクノロジーの進歩によってeコマースで収集されていたデータが実店舗でも収集できるようになってきました。そこで、さまざまなテクノロジーを盛り込んだスマートストアと呼ばれる実店舗が生まれてきました。
例えばリテールAIカメラを設置して、欠品検知や顧客導線の分析を行ったり、棚前行動を分析して棚割りを最適化したり、または店頭のデジタルサイネージで商品レコメンドを表示するといったような、eコマースで活用されてきたテクノロジーを実際の店舗にも投入するというものです。
レジをなくした無人の店舗も登場しており、今後もますますの発展が見込まれるリテールAIのトレンドとなっています。
―――西川コミュニケーションズでもスマートストアの取り組みはしているんですか。
大澤: 当社ではこれまでにない商品レコメンドの実用化に向けて取り組んでいます。従来型の商品レコメンドは顧客属性や購買履歴等に基づいたもので、「これを買った人の多くはこれも買っている」というようなユーザーベースで商品を提示しています。
私たちが目指しているのはそれとは別のデータをベースにしたもので、通常は購買データがないためレコメンドが難しい新商品や、まったく違うジャンルの商品などが提示できるようになります。これにより店頭での新たな商品との出会いが生まれ、お客様によりお買い物を楽しんでいただけるのではと考えています。
このレコメンドには商品の説明文をキーにしたAIテクノロジーを利用しているのですが、これを冒頭でも申し上げました、リテールAI研究会の加盟各社と一緒に店頭実験を進めています。
―――なるほど、それを評価していただき、「リテールAIアワード」の受賞となったのですね。それでは次回はその取り組みに対して詳しくお聞きしたいと思います。
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お問い合わせ大澤洋一郎
西川コミュニケーションズ株式会社 デジタルトランスフォーメーション・サービス クライアントサービス・ディレクター 2000年代前半、大手量販店のハウスエージェンシーにて販促物全般を担当後、 当社に籍を移した2000年代半ば以降、リテール領域全般において、販促物の企画提案はもとより店頭マーケティング立案を手掛ける。 2010年代にはリテールにおけるデータ利活用によるソリューションとそれを根拠とした店頭マーケティングを実施して成果をあげ、 現在はデジタルトランスフォーメーション事業部にてアドテクノロジー、デジタルメディア、システムソリューションにおけるクライアントサービス業務を統括。 リテールAI研究会における当社のプロジェクトマネジメントを主管する。