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時代の変化とともに難易度を増すセールストーク スキル向上のカギとは?
AI 2022.11.17

時代の変化とともに難易度を増すセールストーク スキル向上のカギとは?

営業活動に欠かせないセールストーク。各企業ではさまざまな研修や指導で営業スタッフのトークスキルアップを図っていますが、なかなか成果が出ないという声も多く聞かれます。
セールストークの向上を阻むものは何なのか。どこに課題があり、どう解決していけばいいのか。今回はセールストーク向上の課題について、西川コミュニケーションズでカーディーラーの販促業務を支援する戸谷健二が、AIによるトーク分析サービスを提供するコグニティ株式会社の第1事業部 堀尾桂佑様にインタビューしました。

変化する顧客ニーズとともに、難易度が上がるセールストーク

戸谷: 営業活動におけるセールストークの重要性はいまさら言うまでもないのですが、そのお客様の購入動機、背景を知った上で何が適切な選択なのかを考え、押し付け(セールス)ではなく納得して買おうと思えるまでのプロセスを導いてあげられるようなトークが求められていますよね。

特に自動車販売では同じメーカーの車ならどの販売店で買っても商品は同じという特性があり、しかも購入後も定期点検や車検と付き合いが続いていくことを考えれば、いわゆる売りっぱなしではない長いお付き合いが続いていくわけですから。
信頼してもらえる関係性を構築することで、単なる「買う人」と「売る人」の関係性から進化させることが重要になってきます。

堀尾様: 商品は同じという特性を考えると、自動車販売におけるお客様とのコミュ二ケーションのしどころは、契約にあたる直前になりますね。その最後のタッチポイントのクオリティをいかに上げられるかが成約にいたるポイントになると思います。

戸谷: どうしても売る人と売れない人の差がついてしまう。どの販売店でもセールストークの向上は以前からの重要課題とされていて、研修や指導も当たり前に行われてきました。しかし年々、その成果が表れにくくなっているのが現場の実感のようです。堀尾さんはセールストークの向上を阻んでいるのは何だと思われますか?

堀尾様: 一番の理由は、お客様のフェーズ感が変わってきたことではないでしょうか。以前に比べ、お客様も事前にインターネット等でさまざまな情報を入手しており、来店する段階ではある程度、商品を絞り込んできているお客様も増えました。現在では来店した段階ですでに「あれかこれを買おう」と最終候補にまで絞り込んだくらいのフェーズ感になっています。
お客様は来店した時点ですでに温度感が高いステージにいることをまず理解する必要があると思います。

戸谷: 確かに現在では、メーカーサイトの見積もりシミュレーションでボディカラーやパーツなど自由に選んで、機能や見積もり感も把握した上で来店される方が多いですね。店舗へ来られるのは、実物を見たり、自分で仕入れた情報を確かめるためという傾向が強いといわれています。

堀尾様: 10年前と比較すると、インターネットとの距離も明らかに変わってきました。そういったお客様はネットの情報だけではわからないところを知りたくて来店しているので、そこで営業スタッフがカタログ的な説明をしてしまっては「それはもう知ってる」と思われてしまいます。それでは信頼を得ることは難しいですよね。

つまり、短い時間の中で単なる商品の説明ではなく、一人ひとりのニーズを聞き出して必要な情報を提供するという、よりレベルの高いセールストークが求められているのです。
そういったトークには細かいトレーニング、例えばこういうお客様にはどういう質問をするべきか、どういう説明が求められているのかといった応用力を鍛えるトレーニングが必要なのですが、それができていない。

トークスキルの指導を難しくしているのは、主観的な判断

戸谷: 確かにそういったトレーニングは少ないようですね。商品の機能やサービスを理解するための研修は当然、行われていますが、お客様の状態を聞き出すヒアリングや、その人に合った情報の出し方という、コミュニケ―ションスキルの指導まではなかなかされていないと思います。

堀尾様: 研修や指導は、どの企業でも努力されていますよね。トークスキルについてもロールプレイングを行ったりとさまざまな対応はされていると思います。
ただ研修で行うロープレはやはり現場のセールストークとは緊張感が違うという問題もあります。特に知っている人同士でのロープレとなると、相手が何を求めているのか、何を知りたがっているのかといったことがお互いにわかってしまって、本来なら必要なはずの説明を省いても話が通じてしまうことがあります。

また、実際のお客様相手ではこうはいかないだろうな、と思いながらロープレに参加している人もいるでしょう。 ロープレも重要ですが、同時に現場独特の緊張感の中でスキルを上げていくことも必要ですね。

戸谷: ただ、それなら研修なんかせず実際の接客をどんどん経験して、実践の中で指導するのがいいのかといえば、それもまた難しいですよね。

堀尾様: 研修担当者が成績下位者の商談に同席してトークをチェックするといったこともよく行われているかとは思いますが、そこで陥りがちなのが研修担当者の主観で評価してしまうことですね。

しかも、純粋なトークの内容だけではなく、その人の人柄や声のトーン、ビジュアルや男女差など、本人にはそのつもりがなくとも無意識にそういった部分でも判断してしまっていることも問題です。

人が判断している以上、どうしても避けられないものなのですが、評価やその後の指導にも研修担当者の主観や経験が反映されてしまいます。
その結果として、例えば同じ会社でも店舗ごとに指導内容が違っていたり、研修の評価基準が曖昧であったりといった、指導のバラつきが生まれてしまうのです。

戸谷: そうですね。また、研修を受ける側がどこまで理解しているのか、どう実践で活かせられてるのか、フォローアップがしにくいのが現状のようです。

堀尾様: 新卒の社員なら3~5年目くらいまでは営業研修も多いと思いますが、それ以降となると会社から研修の機会を提供されることがない場合も多いですね。

逆に、指導する側の難しさとして、30代くらいの若手マネージャーが4~50代の部下に指導をしなければならないケースもあります。 なかなか年下のマネージャーからは言いにくいというのが現実ですよね。

戸谷: 研修担当者の考えと受け手の考えが違った場合、それが年上の人となるとますます言いにくいでしょうね。

堀尾様: 結局、ロープレでも実際の商談でも、できている/できていないという判断の基準が、目に見えないことが問題なんですね。指導の大元になるのはそこの判断なのですが、人による評価ではどうしても客観的になりきれない。そこが指導の難しさに直結していると思います。



AIによるトーク分析で「できている/できていない」を可視化

戸谷: その目に見えない判断の基準を可視化するためのツールとして活用され始めているのが、AIを使ったトーク分析です。
実際の商談やロープレの録音データをAIで分析し、トークの診断レポートを出してくれるというサービスで、すでにさまざまな業界で商談スキルの向上に利用されているようですね。

堀尾様: はい。診断レポートからは、分析対象者(指導の対象となる成績下位者)のトークにはその会社の成績上位者と比較してどういった傾向があるのかといったことがわかります。
成績上位者をベンチマークにし、そこと比べて下位者は何がどのくらいできていないのかを可視化するというツールですね。

トークの全体量や質問の回数、会話の時間など、細かい項目もパーセンテージで数値化されますが、注目していただきたいのは個別の項目の単純な○×ではなく、会話の中で情報の深掘りができているか、顧客のニーズを会話から引き出せているかといった、営業スタッフとお客様の双方向の会話の文脈を可視化した部分です。

戸谷: 単純な量や回数だけの評価ではなく、会話の内容についても細かく解析することができるんですね。

堀尾様: 成績上位者はトーク全体のうち15%くらいの情報量として「顧客ニーズ」について話し合っているが、下位者では3%ほどしか話せていないといったように明確に数値で表されます。トークの組み立て方までを総合的に診断できるというのがこのサービスの強みですね。

戸谷: お客様の潜在的な欲求や不満が引き出せているかという点は、成績上位者と下位者との比較では差がかなり出る部分ですね。当たり前に聞くもののようでいて、意外と聞けていないものだということがわかります。

堀尾様: 聞けていない人というのは、質問というより確認に近いような「お子さんはもう成長して家を出られたんですね。それなら夫婦二人用の小さい車に買い替えですか?」といった単純な聞き方をしてしまうんです。

そういった聞き方でもお客様のニーズに7割くらいは合致してるかもしれませんが、実は引き出せなかった残りの3割に真のニーズが転がっている可能性もある。するとその後の提案も本当にお客様の求めているものに応えることは難しくなりますね。
少ない質問から多くの情報を引き出せるかはヒアリングスキルの重要なところです。

戸谷: 成績上位者は相手の課題を的確に把握して、その人にとってメリットのある情報をピンポイントで説明できているということですかね。

成績下位者は見込み客を逃した理由を「価格で負けました」と言うことが多いそうですが、これも顧客ニーズを把握できていないからでしょう。車を買うためにお店に来たはずなのに、なぜ買ってくれなかったのか?そこをきちんと理解する必要があるのですね。

堀尾様: はい、カーディーラーの来店者というのはもう納得できたら購入するくらいのフェーズ感の方が多いと思いますので、それを逃したということは、お客様が欲している情報を提供できていなかったということですよね。

そこでどうして成約までたどり着けなかったのか、考えられる理由を一つ一つ潰していくことが成約に結び付けていく上で必要なんです。
成績上位者と比べて下位者には何が足りないのかをしっかり理解することがまず重要ですし、そうすることで指導の方向性も固まっていきます。

戸谷: そのために判断の指標となる客観的な評価を見える化するのが、AIによる分析ということですね。

堀尾様: レポートを提出した先からは「やっぱりここがよくないのか」という言葉をよく聞きます。上司は自分の部下の弱点に気づいている場合が多いのですね。
けれどそこで数値という見える根拠を持っていたほうが自信を持って指導できるし、受け手側にとっても納得感があるということで、活用していただいています。



AIによる分析は、あくまで指導のためのツール

戸谷: ここで注意しなければならないのは、AIによるトーク分析は正解を教えてくれるようなものではないということですね。あくまで会話の評価を可視化するためのもので、単純に採点結果が返ってくるテストのようなものではありませんよね。

堀尾様: 指導の方向性を教えてくれるツールですね。結果を踏まえてどう改善していくかは、やっぱりそれぞれの企業の努力にかかってきます。

成績下位者はニーズに合わせた質問が少ないという傾向が出たからといって、単純に質問の数を増やせばいいというわけではありません。商談するお客様が100人いれば100通りのニーズがあって、聞くべきことや必要な説明も毎回違いますから、まずどうしてそういう質問が必要なのかを自分で考えられるようにならなければ、実際の商談は改善していかない。

それに、一方的にこうしてくださいと教えるだけではなかなか身につかないですよね。時間が経つとどうしても忘れてしまったりする。レポートをもとに「こういう場合はどう聞けばよかったのだろう、あの時、お客様から何を求められていたのだろう」と自分で振り返ることによって、応用力が身につき、より現場で活きるものになっていくと思います。会話というのは生ものですし、正しい答えが一つじゃないということですね。

戸谷: そのためには分析して結果を確かめ、どうしたらよかったのかを考えて実践してまた分析して......を繰り返していくことが大切ですね。

堀尾様: ですので、改善までにはそれなりの時間がかかります。実際、すでにトーク分析をされている企業では、定期的に分析をするサイクルを作っているところがほとんどです。

指導の基本として、私はまずは聞くべきことがしっかり聞けているか、説明すべきことがしっかり話せているかといったことをしっかり見ていきましょうとよくお話しています。一度にすべてを改善するなんてことは難しいですよね。一つ一つ改善していかなければ難しいです。

やはり分析して終わりではなく、トークスキル向上が目的ですので、しっかり指導を続けていただいていますね。



セールストークを時代とともに更新していくために

堀尾様: AIによる評価をもとにした指導というのは、あくまで営業スタッフ一人ひとりの意識を変えていく、例えば見込み客を逃した理由が本当に価格のせいなのかをきちんと考えるようになるなどの変化をもたらすものだと考えています。

戸谷: 営業活動の属人化を防ぐことにもつながりますね。特にカーディーラーの場合、個人のキャラクターに頼った個性的な売り方をしてしまうと、顧客が会社ではなく個人に付いてしまうということが多々あります。その営業スタッフが退職したら顧客も同時に離れていってしまった......という事態を防ぐよう、なるべく顧客を属人化させないということが長年の課題です。

全員をトップセールスにすることは不可能ですよね。だからこそ会話力を標準化し、商談力のボトムアップを図ることで、全営業スタッフが一定の成果を上げられるようにしていくことが求められているのですが、AIトーク分析を活用した指導はそういった課題にも対応していけそうですね。

堀尾様: トークにまつわるさまざまな課題に対応できると思います。ただ、分析結果をどのように活用していくかは、結局、人の力になってきますね。
消費者のニーズも社会の変化に合わせてますます加速していく中、従来の指導の仕方ではさらに通用しなくなってくるのは確実です。指導そのものをレベルアップしていかなければと考えたとき、AIによる客観的な評価を出発点として、新たな研修方法を探っていくことが重要ではないでしょうか。

戸谷: AIと、それを活用する人間の工夫が必要ということですね。ありがとうございました。

カーディーラー向けAIトーク分析に興味のある方はこらからお問い合わせください

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戸谷健二

西川コミュニケ―ションズ株式会社
アカウント営業

制作プロダクションにてグラフィックデザイナーとして従事後、広告代理店にてクリエイティブディレクターとしてさまざまなクライアントの販促企画に携わる。その後、西川コミュニケ―ションズにてアカウント営業として、流通業界に携わる中で特にカーディーラー業界の知見を蓄積。さまざまな提案活動を行っている。